教育・心理カウンセラーの花賀作象です。前回は忙しい業務の中で考える時間をつくるにはどうしたらいいかについて述べていきました。今回のテーマは「『選ぶ』権利を行使しよう!」になります。業務をする上でいろいろやらなくてはいけないことがあるかと思いますが、それはあなたが「できる」ために起こっている現象になります。その「できる」が「やらなければいけない」へと移行していき、業務がどんどん増えていませんか?その中で本当は選ぼうと思えば選べますが、その選ぶことを放棄して、誰かの言われるままに業務をしていませんか?今回は、いかにして自分で仕事を選んで進めていくかについて述べていきますよ。
目次
選ぶ行為を自ら手放している
シェークスピアは言います。「人生は選択の連続である」と。普段さりげなく行っている作業でも、いくつものやり方があり、その時に何を選ぶかによって、それが良い結果をもたらすこともあれば、逆にとんでもない結果になることもあります。
ここで、この選ぶという行為を誰がやっているかという問題が出てきます。この選択という行為に関して、私たちはどんな選択肢があるかという選択の外的側面には目を向ける一方で、自分自身で選択するという選択の内的側面を見過ごしてきています。すなわち、業務に忙殺されている環境など、どうしようもない環境の中にいることで、自らが選ぶ行為を手放しているのです。
学習性無力感とは
学習性無力感という言葉をご存じですか?これは、心理学者のマーティン・セリグマンとスティーブン・マイヤーによる犬を使った研究から得られたもので、自分には目標を達成したり人生を向上させたりする能力がないと感じる現象のことを言います。たとえば、「昇進なんて無理だ」、「転職してもどうせ給料はそんなに変わらない」、「事業を起こすなんてできるわけがない」、「副収入を得ることなんてできない」「勉強する時間なんてない」、「勉強しても成功できるとは思えない」、「時間を管理するなんて不可能だ」という具合です。
セリグマンとマーティンは、犬を3つのグループに分け、それぞれの部屋は、①電気ショックが与えられるが、部屋内のパネルを踏めば電気ショックを止めることができる、②電気ショックが与えられるが、パネルを踏んでも電気ショックは止められない、③電気ショックを与えない、という状態にして実験が行われました。
そしてこの3つのグループの犬を別の小部屋に連れていき、どの部屋も低い仕切りがあり、一方の床だけ電気ショックが流れるようになっていました。そこで行われた実験の結果、①と③の犬は、すぐに低い仕切りを飛び越えて反対側の電気ショックのない床に逃げることを覚えましたが、②の犬は低い仕切りを飛び越えようともしませんでした。
これは、②の犬が何もなす術がなく電気ショックを受け続けたことによって、ここから何をやっても逃れられないという無力感を身につけてしまったため、電気ショックから逃れるために低い仕切りを飛び越えるという簡単な方法すら行わなかったのです。
すなわち、「何をやってもダメだ」というのを学習によって身につけたのであり、まさにこれが学習性無力感というわけです。実際、私たちも仕事で何かの技能を身につけようと努力している中で失敗がずっと続くと、いくら努力しても無駄だと思うようになることがありますよね。
自分で選ぶ権利を行使する
忙しい毎日が続いている中で誰かに業務を依頼されたとき、それを引き受けるかどうかを選ぶということをせずに、選ぶ権利を放棄して、それを無条件に引き受けてしまうという行為も学習性無力感と似ています。
「エッセンシャル思考」の著者であるグレッグ・マキューンは次のように言います。「選ぶことを忘れた人は、無力感にとらわれる。だんだん自分の意志が亡くなり、他人の選択(あるいは、自分自身の過去の選択)を黙々と実行するだけになる。せっかくの選ぶ力を、すっかり手放しているのだ」と。そして「エッセンシャル思考の人は、選ぶ力を無駄にしない。その価値を理解し、大切に実行する。選ぶ権利を手放すことは、他人に人生を決めさせることだと知っているからだ」とも言っています。
すなわち、どんなに忙しい状況下であっても、依頼された業務をするかどうかを選ぶ権利は自分が持っているのであり、それを行使していくことが大切だということです。
「選ぶ余裕がない」とか「やらなければいけない」などとマイナスに考えるのはもうやめて、自分で「これをやろう」あるいは「これはやめておこう」と考えて自分でそれを選ぶようにするのです。
そのためにもあらかじめ計画を立てる段階で仕事に優先順位をつけて、重要な仕事に絞っておく必要があります。優先順位のつけ方については、私のブログの第6回「時間管理の技能を身につけよう!」と第23回「仕事ができる人になろう!」で詳細に述べていますから、こちらをぜひ参考にして仕事に優先順位をつけるようにしてみてください。また、重要な仕事の絞り方については、第27回「重要な仕事だけに集中して成果をあげよう!」で詳細に述べていますので、こちらを参考にしていただければと思います。
もしあなたが忙しい状況下で重要な業務だけに絞って仕事をしていたなら、その中で誰かから他の業務依頼をされても今やっている業務の重要性を訴えることでその依頼を断るということを選ぶことができます。逆に今やっている重要な業務が終わりそうで、依頼を受けられそうなら受けるということを選ぶこともできます。いずれにしても「自分で選ぶ」すなわち「自分で選ぶ権利を行使する」ことが大事です。そのためにもぜひ普段から重要な業務に絞って仕事を行い、自分で仕事を選ぶようにしてください。
以上になります。今回は仕事が忙しさで追われているときでも、自分で選ぶ権利を行使することの大切さについて述べていきました。それができるようになることで、仕事に対してかなりのやりがいが持てるようになってきます。また、これにより、どんなに忙しい状況でもあなたはいい仕事ができるようになってきますから、今回のことをしっかり実践してみてください。では、また次回お会いしましょう!!
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